現在私の治療院で、鍼の勉強会を「あすなろ会」と読んでやっている。初めは4
人ぐらいで始めたが、最近は10名から15名ぐらいで行っている。この勉強会
にまた二人来たいと一昨日電話があった。この二人は勉強会とは別に、今、週
2回研修に来ている人の同級生だと言う。長く続くといいなと思う。
私は思った。「また、芋を転がす話ができるとはありがたい」
芋を転がす話。
あるところに小さな村がありました。この村にも旦那様と呼ばれている豊か
な暮らしをしている人がありました。
ある時、旦那様はよその大きな町の大旦那様に食事に招かれました。
「村の人たちも連れて一緒においで下さい」
と言うことでした。そこで旦那様は村人に言いました。
「皆さんも一緒に行きましょう」
村人は旦那様に言います。
「旦那様、お伴するのはいいのですが、特に食事の作法が分りません。どうした
ら良いでしょう」
旦那様は考えたあげく村人に言いました。
「今からでは憶えるのは間に合わない。それで、何から何まで私の真似をし
なさい。」
さて、当日はどんどん時間も過ぎ、夕食になりました。
手はずの通り、村人は旦那様が箸を挙げれば一斉に挙げ、お茶を飲めば一斉に
飲むというように真似を続けていました。
このまま無事に食事は終わろうとしていると、誰も思って安心していました。
ところがある時旦那様がうっかり芋を下に落として転がしてしまいました。
それを見た村人は、皆一瞬箸を停めましたが、やがて落ち着いて、次々と芋を
畳に転がしました。落ち着かなくなったのは旦那様です。指が固まって箸がうま
く使えずにいろんな物を転がします。村人も何食わぬ顔でいろんな物を転がしま
す。慌てた旦那様は、ますます慌ててしまいました。それを見たよそのお客様は
初めはクスクスと笑っていましたが、やがて大笑いになってしまいました。
これが芋を転がす話です。
そして私はこう付け加えます。
これから私は貴方に鍼をお教えします。初めは鍼の中身が分らないのでどうか
この村人のように芋は転がしてください。そして私は本当はいけないのに、つ
いつい芋を転がしてしまいます。つまり鍼でも間違いをしてしまうこともありま
す。転がす芋が良いことか、悪いことか、このやり方が間違いなのか、正解なの
かが初めは分りません。だから3年ぐらいは皆さんも、何時芋は転がして良いのか
悪いのかが分るまでは、芋は転がしてください。つまり真似をしてください。
4年ぐらいになって間違った鍼が分るようになったら
芋は転がさずに済むようになります。そうしたら真似をすることを卒業して、自
分の鍼を始めてください……。
この大変意味のある話は、ある鍼の講義で私が今から40年ぐらい前に読んだ
話である。
oushi@s6.kcn-tv.ne.jp
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